ちろうのレイブル日記

本当によい教育を考えるためのブログです

カーンアカデミー創設者の本を読んだら、やっぱりこれからの勉強は無料動画で十分なんじゃないかと思った

カーン・アカデミー創設者のサルマン・カーン氏の著書『世界はひとつの教室』を読んだ。

カーン・アカデミーについては名前を知っているくらいだったわけですが、むしろなんで今までちゃんと調べなかったんだろうという感じかもしれない。とはいえ、manaveeのことはずっと考えていたし(manaveeが立ち行かなくなってMANAVIEに生まれ変わっていたのも知らなかったわけだが)、むしろmanaveeの元になった世界で最初の教育プラットフォームだったんだなと理解した。

なぜ今このタイミングで読んだかというと、ブックオフで見つけたから。タイミングって大事。そうしたら想像以上に素晴らしくて、本質的な考えが書いてあって、あ〜やっぱりコレコレって思いました。ちなみに「カーン・アカデミー」とは、「質の高い教育を、無料で、世界中の全ての人に提供する」というミッションのもと、2008年に創設されたNPO。いろんな学習のためのレッスンビデオがネット上に公開されていて、誰でも無料で利用できるというサービス。

まずはこのような動画が、誰でもアクセスできる場所に、無料で、大量に置いてあるということ。10年以上前には考えられなかったこの状況が、今の時代には実現している。これが決定的であり、パラダイムシフトであり、大革命なんですよね。このことをもっと現代の我々は自覚したほうがいい。

これはアメリカ発のものだから英語メインかもしれないけど、同じ状況が日本でも盛り上がっていて、教育Youtuberがどんどん出てきて質の高い動画を出しており、定額料金(月額1000円程度)払えば、もっと体系化した、プロ講師の授業動画が見られるサービスもある。質に関してはもう必要十分なレベルを超えているんじゃないですか。あとはどれだけコチラ(学習者)側がコミットしていけるかどうか。やるかどうか、それだけ。

これ、中高生とか受験生にとどまらないで、大人のための語学学習とか、雑学や知的好奇心を満たすレベルのものまで、もうなんでも揃っているわけです。これを利用しないというのはもはや怠慢という他ない。強いて言うなら、データ通信無制限の環境があるかとか、モニターなり端末があるかとか、あとは動画を見て学習するというモードに入れる精神力があるかどうか。


もちろん高いレベル(例えば東大特進コース、SAPIXのような)での予備校の授業のようなものには、多分にモチベと能力の高い生徒が集まるでしょうから、生授業としての価値があると思います。スター講師のカリスマ性というものにも価値がありますし。でもそれって全受験生のせいぜい上位1〜3%位のもんでしょう。それはそれとして、あとの大半はもう無料動画でいいんじゃないですか。

すると世にはびこっている、コンビニの数にも匹敵するとも言われている学習塾、個別指導塾(公文とかも含まれるのかな)にはどんな価値が求められるのでしょうか。


それは、「ちょっとした強制力」「進捗管理とフィードバック」「大人の視線」ではないでしょうか。

●「ちょっとした強制力」

どうしても一人では学習が進められない、課題を与えられないと始められない、という精神力の弱い人間(子供とか)には、強制力が必要。とはいえちょっとしたものでいい。無理やりやらせたらそれはもう逆効果ですから。
この小テストやってみよう」とか「10分以内でやろう」「こんな問題もあるよ」とかいろいろ口を出す。もう強制というより提案といっても良い。どんな内容のものを提案するか、ここに力量が問われる。レベルデザインと、良問を見極めるセンスが必要。
作文書かせるとかも良いと思う。作文なんて子供が苦手とする定番のものだけど、あんなものは、いつ、どこで、誰と、何をした、何があった、どこに行った、何が面白かった(つまらなかった)、とか書いていけばあっという間に400字くらい埋まるもんなんだってことをきちんと教えてやればいい。技巧的な文章なんか書かなくていい、特に小学生は。誤字脱字を指摘してやるくらいで。しかしこれを自発的に書き始めるってことは、まあないだろうね。だからちょっとした強制力がやっぱり必要。


●「進捗管理とフィードバック」

単純に進捗管理だよね。岡田斗司夫氏のレコーディングダイエットというものがありましたが、レコーディングすること自体に意味があって、これもやっぱり自己管理能力が必要だから、それをサポートしてあげる。「これだけのテキストを終わらせた」「定期テストの点数が(前と比べて)こんなに上がった」「これだけの動画を見た、本を読んだ」と見て分かるように記録してあげて、フィードバックする。そうしたら自信もつくでしょう。

学習の効果を最大化するにはまずはレコーディングが大事です。これを代行してあげる。
(ここの価値をかなり早い段階で提供し、今や世界中に進出しているのが公文式。これは素晴らしいことです)


●「大人の視線」

単純にその場に大人がいるということ。大人の視線があるという事実。しかも親でない、学校の先生でもない、なんかよく分からないけど「塾の先生」とされている大人がそこにいるというのに意味がある。これは友達とかお兄さん的雰囲気でない方がいい。馴れ合ってしまっては大人の視線の意味がない。緊張感が必要。

あとは背中を見せるという意味もある。この大人自身が学習し続けているという姿勢を見せるのが望ましい。例えば日頃からめっちゃ本を読んでいるとか、世の中の動きに敏感とか、最新の情報を貪欲に追いかけているとか。「この人、大人なのにめっちゃ勉強してるやん」と思わせる。そうしたら勝手に子供はマネします。たぶん。


まあとにかく学習塾というものはこういった価値を提供する場所であればいいと思う。最近は「自立型学習塾」といって、授業をしない塾ということを打ち出しているところが増えていますね(武田塾が有名でしょうか)。これは正しい流れだと思いますよ。授業なんかYoutubeにお任せでいいんですよ。効率よく行きましょう。



あ、なんか本の内容に触れないでいろいろ書いてしまった。『世界はひとつの教室』がすごく良かったのは、カーンアカデミーが認められていく過程も良かったですが、サルマン・カーン氏が提案する、新しい教育現場のあり方がものすごく理にかなったものだったからです。むしろこちらが本書のメインメッセージです。

さらに言うと、僕が書いた同人誌『本当によい教育を実現するための覚書』のなかで提案している内容と、あまりにも似ている、まったく酷似している、というかパクられたんじゃないか疑惑が出るほどの親和性がありました。
(スミマセン、完全に調子乗りました。むしろ時期的に言ってパクったのは僕の方だろ、というツッコミはさておき。でもこの本読んでいなかったんですよ、本当に。驚くくらいおんなじことが書いてあった、もちろん僕よりも高い精度で。笑笑)
(その詳細を改めてここに記するのにはあまりにも紙幅が足りないので、本書を読んでいただくか、僕の同人誌を読んでください)

とにかく、本書を読んで僕は改めて刺激を受けました。
もちろん、世の中には高い志を持って、質の高い授業を展開している個人塾の先生方もいらっしゃいます。みなさんのご意見も聞いてみたいです。何かあったら情報共有したいです。何卒よろしくお願いします。