ちろうのレイブル日記

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お前らは今すぐ仲谷明香著「非選抜アイドル」を読め

先日、新宿福家書店にてAKB48仲谷明香さんの書き下ろし著書「非選抜アイドル」の発売記念イヴェントに行ってきた。いずれにしろ入手するつもりだったが、せっかく発売イヴェントがあるのでこの日まで買うのを我慢していた次第(「さしこ」と同じパターン泣)。そんなわけで本人に目の前でサインしていただいたものをゲット!

それで先ほど一通り読んだわけだが。。。AKB48現役メンバー、あるいはあらゆる人気商売に就くもの、あるいはなにものでもないぼくたちにとって、これほど勇気と指針を与えてくれる著書は他にないであろうと確信した。少なくとも、AKB48を語る者、あるいはAKB48というものに好意的な感情を持っている者であるならば、避けて通ってはならないような必読本、バイブルともなりえる作品である。

ぼくはかねてから、このようないわゆる必ずしも光の当たらない場所―――ここではあえて著者に倣い「非選抜」と表現することにしよう―――からの景色を誰かに語ってほしいと思っていた。それはぼくには出来ないし、評論家にも出来ない。むろん前田敦子にも出来なければ秋元康にも出来ないことだ。それは当事者の口から語られる以外あり得ない。もしそのようなことが為されるのであれば、だれが実現してくれるのか。この本が出版された今、思うことは、それは仲谷明香によってしか為し得なかっただろうということだ。そしてようやくぼくたちは、AKB48という極めて特殊なエンタテインメントのこれまで語られることのなかった非選抜という暗闇に、光が射す瞬間に立ち会うことができた。

この本は仲谷明香の小学校時代から始まり、両親の離婚、千葉への引っ越しを経て、中学校時代にAKB48に加入、そこで経験するさまざまな苦悩や経験から少しずつ成長し、最終的に声優としての夢を掴むまでの軌跡が記されている。秋元康氏はよく「成功する者は皆、運を味方につける」と良く言う(正確な表現は忘れたけど、要は運も大事だよ的なことで)けど、まさにそれを証明するかのような内容だった。仲谷明香はここぞという大事な局面で、常に運に味方されている。

まず中学時代に転校した先が、前田敦子と同じクラスだったということが奇跡的だ。中学校時代の仲谷明香は、同級生の前田敦子がアイドルをやっているといううわさからAKB48の存在を知ることになる。AKB48をケータイで調べると(パソコンを持っていなかった)、「夢のショーケース」と書いてあり、声優になるためのステップでAKB48に入るのもアリだと思い立ち、第3期オーディションに応募し、見事合格を果たす。

そして、実際に声優の夢を掴むとき。ここでは不可避的に「もしドラ」こと「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」が関わってくる。それは著名なはてなブロガーであるところのハックルさんこと岩崎夏海氏によるものだ。そもそも岩崎氏は秋元康の元弟子であったこともあるが、仲谷明香AKB48に加入し、岩崎氏の目に止まったことが奇跡的としか言いようがない。

アニメの声優の座を射止めるとは並大抵のことではない(しかもチョイ役というわけではなく、そこそこの役だ)。よほどの強運の持ち主だと言えるだろう。とはいえ、仲谷明香が必ずしも運だけでここまでの成功を掴んだわけではない。その間にたゆまぬ努力を続けてきたからこそ実現することができたのだ。選抜総選挙によって否応なく「非選抜」という称号を与えられ続けながら。(仲谷明香がどのような努力をしてきたかは、是非著書にあたってほしい。)

選抜総選挙で「圏外」などという結果を突きつけられるのはどのような心境なのだろうか。決して嬉しいことではないと思う。たとえそれが多数派だったとしても(当選枠が200人中40人ならば、圏外は多数派だ)。仲谷は過去3回の総選挙で、全て圏外に甘んじている。これは喜ぶわけにはいかないだろう。ではどう受け止めればよいか。仲谷自身も、総選挙が行われると聞いた当初、「人気を得られなければ、順位がつかなければ、AKB48を辞めなければならないのかもしれない」と思っていたらしい。でも徐々にそうではないことに気づく。選挙の後になると、よりファンが温かく迎えてくれ、また自分の努力が評価されるようになってくる。(例えば評価されていった例として、メルマガ(モバメのことと思われる)を最低限1日1回しっかり発信することによって、契約数が増えていったことを挙げている)。順位が全てではないということに気付いたのだ。

順位が全てではないというのは、まさにその通りである。もちろんメディア選抜と言われるような、1〜12位くらいは、やはり価値がある。まぶしいくらいに輝いている。では20位はどうか。30位は?40位は?そんなものにはほとんど価値がないように思われる。「総選挙で3○位!」と言われてもピンとこない。もちろんぼくたちには結構すごいことは分かるが、AKBリテラシー(試験的にこんな言葉使ってみました笑)の低い人には、「AKBグループは250人近くいて、そもそも40人しか順位が付かなくて、だから順位が付いているだけでそこそこスゴくて、、、」みたいな説明をしなければならない。そんなものにはやっぱりあまり意味がない。大事なのは、AKBというグループの中で、あるいは広くは芸能界の中で、どんな存在感を出しているかだろう。

拙著「AKB48とは指原莉乃のことである」の中で、例え総選挙のようなもので必ずしも評価されなくても、自分に向いている分野、やるべきことを熟知していて評価できる例として、(指原莉乃はもちろんのこと)仲谷明香岩佐美咲を挙げさせていただいたが、まさにそういうことだ。自分のやりたいことであり、自分に向いていることでもあり、さらに不断の努力を惜しまないという姿勢こそ、ぼくたちが見習わなければならない部分であるというのが拙著の主張である。それが本書「非選抜アイドル」では、まさに当事者からの視点で同じことが語られている。このシンクロ率は恐るべきことだ。

かつて岩崎氏とお話をする機会があった時に、氏が「仲谷は良い感じだ」とポロっとこぼしたことがある。AKB48の中にあって、多くのメンバーが総選挙で順位が付かないという非選抜になるという中にあって、仲谷は良い感じに頑張っているという意味なのだと思った。今の仲谷の活躍を見れば「良い感じ」どころではない。「超良い感じ」だ。それはもうその時点で「もしドラ」のオーディオブックの朗読に抜擢していることから証明されていることではあったが、この本によってその理由が解き明かされたような気がした。

この本は心理描写、葛藤や考えの移り変わりなどもうまく表現されている。しかも文中で

(中略)これはAKB48でも何度か経験したことなのだが、メンバーやスタッフが良かれと思ってしたことでも、ファンの方々にはそう受け取られず、結果として大きな失敗と評価されるケースというのは珍しくなかった。

とさりげなく運営批判をしているところも高ポイントである。

非選抜アイドル (小学館101新書)

非選抜アイドル (小学館101新書)

 

本書「非選抜アイドル」は、世に溢れているAKB48と名の付く書物、まあ必ずしも名前が含まれていなくても、AKB48関連の書物の中でベスト3に間違いなくランクインされることだろう。

ちなみに残りの2つとはもちろん、「指原莉乃フォトブック さしこ」と「AKB48とは指原莉乃のことである」です。

指原莉乃1stフォトブック『さしこ』 (講談社 MOOK)

指原莉乃1stフォトブック『さしこ』 (講談社 MOOK)