ちろうのレイブル日記

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【連載】指原莉乃の軌跡その5〜さしこ、ついに頂点に立つ〜

2013年6月、AKB48の5回目のシングル選抜総選挙が行われた。選挙前に発売された総選挙ムックの表紙グラビアが象徴するように、大島優子渡辺麻友との一騎打ちと思われていた5回目の総選挙だったが、その予想は速報発表から大きく覆された。5月22日に発表された速報発表で、指原莉乃が2位に倍近くの票差をつけての1位だったのだ。

この時点で、今回の総選挙でほとんど指原は主役となってしまったように思う。というのも、このダントツの1位という結果がまず予想外で面白く、そのまま1位を維持しても、結果的に首位から転落してしまったとしても確実に取り上げられ、つまりはどちらに転んでも大きなドラマであることは間違いなかったからだ。やはり人は歴史が大きく変わる瞬間を求めてしまうのだ。

そして6月8日、第5回シングル選抜総選挙の結果が発表されるその日、ぼくは大分にいた。去年と同様、指原莉乃の地元大分でパブリックビューイングが行われることが分かっていたので、その場所で地元のファンの盛り上がりを体感したいと思ったのだ。とはいえ実際の開票イベントは横浜の日産スタジアムで行われており、東京に住んでいる僕からすればそちらのほうがはるかに近い。もはやこの行動は正しいのか正しくないのかよく分からなかった(笑)。現に会場で、1年前にお話させていただいた大分市役所勤務の職員の方(観光課・指原莉乃さん担当)に再会し、「そこは(大分ではなく)現地に行くんじゃないんですか!?」と突っ込まれてしまった。現地に行けない(チケットがない)のであれば、パブリックビューイングを選ぶ。ぼくの心の故郷はすでに大分にあった。

結果は2万票近くの差を付けて堂々の1位。大分という決して人口の多くない県から飛び出した指原莉乃という少女が、ついにAKBグループの頂点に立った瞬間だった。

指原莉乃の1位は、AKBグループ史上にとって何もかもが初めてのことだった。

まず一つ目に、AKB48以外の姉妹グループに所属していながら1位になったということ。もちろん1年前までAKB48に所属していたメンバーだからもともと知名度はあったのだが、HKT48のメンバーがトップに立ったという事実は、グループに所属する全てのメンバーにとって大きな希望となるだろう。

二つ目に、前田敦子大島優子以外のメンバーがトップに立った初めての事態であるが、さらに言うと研究生からキャリアをスタートさせたメンバーが初めて1位を獲得したということでもあるのだ。これまでAKB48の課題とされてきた「世代交代」を大きく実現した瞬間だったと言えるのではないだろうか。これからどんどん若い世代が台頭していくことが求められるAKB48にとって、5期生である指原の1位は世代交代の大きな一歩である。

他にも、恋愛スキャンダルを乗り越えて活躍しているメンバーであること、グループ史上初でもある劇場支配人兼任という立場であること、「笑っていいとも!」に代表されるバラエティ番組に多く出演していること(そこで可愛くないことをいじられている点も含めて)など、数え上げればキリがない。指原は1位になった後のスピーチで「指原が1位になっても、AKBは壊しません」と言ったが、既存のAKB48のあり方を(良い意味で)壊し続けているのは疑いようがないだろう。単なる破壊ではなく、常に新しいものを生み出し続ける「スクラップ&ビルド」。これをPLANETS編集部のV3氏は「指原莉乃によるリノベーション(改修)」と表現した。言葉遊びとしても面白いと思う。


指原莉乃に関する議論は尽きることがない。論客と言われる人の中にも、指原莉乃がセンターであり続けるべきではないという人もいる。今回、民意によって選抜総選挙で1位になりセンターを獲得したことは確かだ。しかし、今後もセンターであり続けるということまでは意味していない。例えば、指原の1位を速報前から各種メディアで予想していた濱野智史氏は、「今回の1位は彼女のメディアでの活躍、HKT48への貢献を考えれば当然の結果」だとしながら、「今後も指原がセンターであり続けるべきではない」という発言をしている。これまでAKB48がそうだったように、指原莉乃もまた、今後の展開が読めない存在だと言っても良いだろう。


1位になってからの指原は自信をつけてきたのか、これまでにも増して本音を打ち明けることが多くなってきたように思う。「週刊文春には感謝している」「自分は性格がねじ曲がっている」「過去にネットに書かれた悪口を未だに根に持っている」「アンチを全く気にしない」と言ってみたり、バラエティ番組では過去の彼氏との話をネタにしたりしている。そういう部分で反発を覚えるアイドルファンもいるようだ(かつての小林よしのり氏もそうだった)。

9月4日に発売された、HKT48の2ndシングル「メロンジュース」の特典DVDに収録されている指原莉乃小林よしのり氏との対談で、「自分に起こることは、良いことも悪いことも全部、未来に起こることの前フリだと思っている」という発言をしていた。想像もしていなかったことや、自分にとって都合のよくないことも、それをネタにしてまた前に進んでいける自信があるのだという(これによって小林よしのり氏はブログで敗北宣言をするまでに至った)。ここまでくると、どんな苦境も、またどんな批判も指原莉乃にダメージを与えることはないだろう。しかしこれは、1位になったのを良いことに好き勝手に振る舞っているということではない。アイドルとして舞台に立つ者としての責任を果たすことや、仕事相手に対する礼儀、後輩に対する優しさを忘れずにこれまでやってきたからこそ、この境地に達することができたのだと思う。改めて、アイドルのみならずぼくたちにとっても見習うべき姿ではないだろうか。

ますます、これからのHKT48指原莉乃の活躍が楽しみだ。