ちろうのレイブル日記

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同人誌新刊「仮面女子の研究☆」まえがき公開

皆さんこんにちは。チロウショウジです。2015年8月14日(金)、夏のコミケにて発表する同人誌新刊「仮面女子の研究☆」まえがきを公開します。

前回「アイドル〈ヲタ〉になる方法」「ちろうのAKB体験記」から一転、まったく違うものをテーマに扱うことになりました。自分自身、全く予想しなかったことでした。しかしこれだけアツくなれるものと出会えたことは本当に幸せなことです。その勢いを大切にしながら、自分なりに今考えている全てをつぎ込んだつもりです。

今年の1月くらいには、一発ぶち上げてやらねばなるまいとは考えていたのですが、この半年だけを切り取ってみてもアリスプロジェクトは日々ものすごい変化をしていて、結局このタイミングとなりました。11月にはSSA単独公演も控えているので、結果的によいタイミングではないかなと思います。

また、前回に引き続き、経済学者でアイドルヲタクの田中秀臣先生にもご寄稿をいただきました。そのタイトルが「仮面女子はなぜ「嫌われる」のか?」という現在のアイドルシーンに深く切り込んだ超絶必見論考になっています。「たけしのTVタックル」で共演されたときの印象なども盛り込まれていて、間違いなく本書の目玉テキストとなっています。これも絶対に読んでほしいです。


まえがき

2015年、夏。「仮面女子の研究☆」をお届けする。

とにかく今、「仮面女子」がアツい。暑苦しいと思われるだろうか。確かに、ただの一アイドルヲタクが数多あるアイドルグループの中の一つを熱心に応援しているだけで、勢い余って同人誌を作っちゃったに過ぎない、と思われるかもしれない。それを否定することはしない。しかしことはそう単純ではない。「仮面女子」はただのアイドルグループではなく、一つの「システム」として存在している。「仮面女子」と、将来的に仮面を被ることを目指す「仮面女子候補生」、「各派生ユニット」と「スライムガールズ」「AJ(アリス嬢)」。それらのユニットが、日々メンバーを更新しながら、しかし確かな成長を見せながら奮闘している。まさに地下アイドルの醍醐味である「日々の成長物語」をストレートに提供している。それは一つの生態系と捉えた方がよい。私たちはそれに近いものとして「AKB48」を思い浮かべることができる。むろん、歴然と小さな規模での話だ。しかしここで「規模が小さい」ことは、必ずしも「価値が低い」ことを意味しない。規模が小さいということは、そのまま「身近である」ということでもあるからだ。「気軽に会いに行ける」のがいわゆる地下アイドルの魅力ではなかっただろうか。「AKB48」との共通点、そして比較については本文の中で取り扱っているので良いとして、とにかく「仮面女子」は一般的なグループアイドルとしては括れない存在だということをまずは理解してほしい。そして、ではどんな様相を呈しているのかということについて、なるべく忠実に記述したのが、本書「仮面女子の研究☆」である。

「仮面女子が盛り上がっているので、その魅力を伝えたい」という思いがもちろんある。しかし筆者の問題意識はむしろ、「アリスプロジェクト」及び「仮面女子」が、“あまりにも正当に評価されていない”というところにこそある。
すでに熱心な仮面女子ファンからすれば「正当に評価されていないとは何事だ」とお叱りを受けてしまうかもしれない。あるいは「余計なお世話だ」と言われてしまうかもしれない。しかしこれは紛れもない現状だと思う。

アイドル評論の世界では、AKB48についての言説や議論が盛り上がっているのは当然として、AKB48よりも長い活動歴を持つハロプロPerfume、十分に人気と歴史を積み上げてきたももクロ、でんぱ組などのグループについて言及されることも増えてきた。これは現代にグループアイドル文化が根付きつつあることの証明であるだろう。では仮面女子についてはどうか。どうもネットメディアの一部でその魅力や実情を伝える記事が出ている程度で、大手出版社が大々的に取り上げるとか、マスメディアで頻繁に言及される、というところまでは至っていない。

ここに筆者は、違和感を覚える。

これは贔屓目に見ているのでもなんでもなく、現在の仮面女子はアイドル界に無視できないレベルのインパクトを与え始めている。秋葉原に専用劇場を持ち毎日公演をするというバイタリティ、バラエティ番組への出演需要、秋葉原電気街口にある巨大看板、さいたまスーパーアリーナでの単独公演、そしてオリコンウィークリーチャート1位(インディーズ女性グループとしては史上初)。これらの実績はいわゆる「地下アイドル」と言われているアイドルグループの中では群を抜いている。しかしその目立った実績が、いかにも「理解できない」「阿漕な」「力任せの」といったような“不穏なイメージ”とともに一人歩きしているように見えてしまう。そうなってしまうのは端的に、その実態が知られていないからではないか。人は得体の知れないものを、不快に思ってしまう。
しかし歴史を振り返れば、世界を変えてしまうほどの影響力を持つものが世の中に出た当初には不穏なものとして見られ、その真価が理解されにくいものだった。携帯電話、インターネット、i‐mode、AKB48、iphone、・・

アイドル界に話を戻せば、AKB48以降、様々なアイドルグループが乱立し、今ではアイドルファンでない層にもその名前を知られているグループも出てきている。しかし、ではそれらのアイドルに一体どんな魅力があり、支持を受けているのかというのは、そのグループのファンでない人には伝わりにくいものだ。
いや、世間一般からすれば、あのAKB48グループの実態ですらよく理解されていない。仮に好意的に思い、握手会に行ってみたいと思う人であっても、その参加方法がよく分からず見送ってしまうことがあるほどである。いわんや「地下アイドル」と十把一絡げにされている無数のグループをや。これほどまでに、理解してもらうというのは、難しい。もちろん情報が飽和してしまっている、という理由もある。しかしそんな中でも十分に世間にリーチするだけの魅力を、仮面女子はすでに持っているはずだ。少なくとも筆者は、そう確信している。

アリスプロジェクトは、現在の情報社会に驚くほど適合した画期的な施策を次々と打ち出しており、またそのスピードも早い。もともと大手芸能事務所でもないアリスプロジェクトが、この影響力を持ちながら、次々と世間を騒がせるのはやはり尋常ならざる事態だ。だからそれを丁寧に記述して世に送り出すのが、本書の目的だ。仮面女子が正当に評価されるためには、何を措いてもまずは「理解してもらうこと」しかないと感じた。それが「仮面女子の研究☆」を書き始める動機である。

本書はアリスプロジェクトの「歴史」についてはそれほど深く掘り下げられていない。それは筆者がヲタになってまだ1年ほどという新規ヲタであることも理由の一つだが、あまりにもマニアックになってはいけないとも思うからだ。とにかく「今が一番おもしろい」と言えるのがそのグループにとって最良であり、まさに仮面女子はその状態にある。だからまずは今、仮面女子およびアリスプロジェクトがやっていることを丁寧に取り上げることを心がけた。

そして本書は「楽曲が素晴らしい」とか「とにかくメンバーが可愛い」という話に終始してはいない。もちろんそんな話も満載であり、欠かせない魅力であることは間違いないのだが、今の時代、曲が良いとかメンバーが可愛いとかいうのはもはや前提事項であり、差別化の契機とはならないからだ。例えば文化評論家のさやわか氏は、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」等を例に挙げながら「アイドル界はいまや曲までもいい」と表現している。どのグループも質の高い楽曲を持っていることは当たり前なのである(それでもあえて強調しておきたい。仮面女子の楽曲は本当に素晴らしいと!)。

それでも仮面女子およびアリスプロジェクトには、そのシステムから思想、志向性、メンバーの(ビジュアルに限らない)魅力、動画のアーカイブ、プロデューサーについて等々取り上げていったら、あれもこれも書かなければならないといった事態になってしまった。それだけ語るべきものが豊富にあるということだ。いわゆる「普通の」地下アイドルではこうはいかないだろう。
それもそのはず、仮面女子は「最強の地下アイドル」を自称し、「国民的地下アイドル」を目指しているという。それは現実のものとなるのか、はたまた幻か。それを確かめるためには、遠くからただ眺めているわけにはいかない。私たち自身も地下に潜る必要がある。いっけんそこはあまりに光の届かない、祈りも届かない、暗闇のように見えるかもしれない。しかしそこで一歩を踏み出すことが、新たな世界への扉を開くことになるだろう。本書がそのための勇気を持つことの手助けになれば、幸いである。

そこには何が待っているのか。現役東大生アイドル桜雪ちゃんは、自身が作詞した「アリスの檻」という楽曲の歌詞に乗せて、こう暗示している。


ウサギが囁く 忘却の呪文を
少女の血で動き出す歯車“it's the wonderland”
不気味で可愛いフレーバー味わったら
アリスの虜 the sweetest wonderland

アリス・イン・アンダーグラウンドの世界へ、ようこそ。


2015年7月末日
自宅にて「星たちよ☆」を聴きながら
ちろう

近いうちに、目次などの詳細、頒布方法なども公開していく予定です。コミケに来られない方にも、通信頒布や秋葉原での直接手渡しをすることもできるので、ぜひよろしくお願いします。もしご興味がある方は、Twitter→@tirou_exのフォローをお願いします!!!