ちろうのレイブル日記

本当によい教育を考えるためのブログです

五月祭教育フォーラム2019“教育改革”のその先へ~新時代に求められる人物像とは~のレポ

今年も五月祭の季節がやってきた。


■昨日18日(土)10:30~
「時間がつくる建築の魅力:西洋の建築再利用の歴史」(加藤耕一先生)という公開講座を見ていた。

古代ローマ時代から中世を経てルネサンス、そして現代へ。長い歴史のある「再利用的建築観」に対して、近世に入ると「再開発的建築観」が始まり、近代以降は「文化財的建築観」が勢いを増してきた。特に最近の日本ではそうだ。

古い価値ある建物を守るのは(修復・保存の)「文化財」か、(破壊・新築する)「再開発」という方法だけなのか。今こそ既存建物を改変しながら「再利用」していくという方法を見直すべきではないかという提言だった。過去の事例紹介や、現在でもロンドンでサッカーチームのホームグラウンドをマンションに改築したという事例があるそうですね。これは面白かった。

 

■12:00~ZOCのステージ
安田講堂前でZOCのステージ。話題のグループなんでものすごい人だった。約40分、パワフルなステージを堪能できた。あんなに強烈なキャラをそろえているとは驚きだった。「family name」を初めて生で見ることができた。西井万理那ちゃんが可愛かった。


そういえば4年前(だよね?)仮面女子のライブを見に来たのが今となっては懐かしい。

 

■19日(日)10:00~
法学部1号館で瀧本ゼミの学生の政策提案発表会。なんか去年も見に来た気がする。一つは去年と同じテーマだった。今年は文京区の区長が招かれていた。学校の始業を遅らせると中高生のパフォーマンスがてきめんに向上するという話が面白かった。睡眠不足解消、学力向上、病欠が減少、etc。不登校にも効果があると思われる。
これはかなりの程度、真実だと思うので、是非ともうまく運用していただきたい。
思春期は生理的に最も夜型化し、その後、朝型に戻っていくという。
中高生の6:00起床は、中高年の3:30起床に相当するらしい。これは可哀想すぎるでしょwwww

 

■13:00
Y-20サミットというよく分からないトークセッションがあって、ファシリテーター有働由美子アナだったから1時間くらい覗きに行った。学生団体が6つくらい、自分たちの活動報告をしていてすごいと思った。ユニセフで20年働いている人も来ていた。

 

とまあ長々と今年の五月祭のイベントの参加レポを書いてしまったが、どんだけコミットしているんだよという気もするが、これらは主題ではない。


■2019年5月19日(日)、ROJE五月祭教育フォーラム2019“教育改革”のその先へ~新時代に求められる人物像とは~
今回のメインイベントは「教育フォーラム2019」である。

過去に何回も(去年は確実に)参加しているような気がするが、ろくにレポを書いていないので分からない。3回目か4回目だとは思う。んで毎年のことながら蔭山英男先生も目当てではあったが、今年は特に麹町中学校の校長として有名な工藤勇一先生が登壇するということで、楽しみにして1か月くらい前から予約していた。

結論から言いますと、大変刺激的でした。


まず中村伊知哉先生のお話。そういやこの前ヨシモトの社長×坪田先生の講演の時にもいたなあと思い出したのですが、よく存じ上げませんでした。だけどすごいプロジェクトを動かしている人だった。
3つのことを2020年に大きく動かすという。それが「超人スポーツ」「街づくり」「学校を作る」

 

特に後半二つがすごかった
街は竹芝に40階くらいの巨大なビルを作っていて、あらゆる文化と行政と産業と、まあとにかくそこで全てが完結するような街を作るんだって。そしてあらゆる意味で特区にして何でもチャレンジできる世界。中国の経済特区みたいに、日本に新たに全く新しい、チャレンジングな場所ができるかもしれません。

 

そして関連して「i専門職大学」というものも2020年に立ち上げるとのこと。先日吉本がNTTと組んで100億円出資してもらったというヤツとも絡んでいるんですね。


メモ:
客員教授100人」(←これはもう超えてて200人になるかも)
「全員入社」(全員が就職できる関連企業を新たに作る、既存の企業への就職率は0%を目指す)
「全員起業」大学在学中に必ず全員が起業するという経験をする
「教員特区」
「パスポート」
東京は世界的に見てもクリエイティブな街だから、羽田の玄関口×成田の玄関口(墨田×竹芝)にぶち上げる。


ここ3年くらいで、明らかに教育にまつわる動きが大きく変わっているように思います。それが学校を作るという流れです。N高校は動き始めて4年目ですし、苫野一徳先生も作るし、ホリエモンも作っているし、そして「i専門職大学」なんてのがもう2020年に動き始めるんですね。詳細はこれから分かっていくと思うのですが、楽しみにウォッチしていきたいと思います。

 

そして工藤勇一先生のお話。著書も読んでいて具体的な教育改革はなんとなく知っていましたが、生で話を聞くとやはり違いますね。本質を徹底的に追及している。勉強時間が増えることは良いことか。宿題は必要か。服装指導は必要か。体育祭をはじめ、あらゆる学校行事の一番の目的は何か。詳しくはこれを読んでください。→

 

 

重要なキーワードは「当事者意識」、「絶対に人のせいにしない」、子供に「世の中はまんざらでもない」と思わせること、と言ったところでしょうか。

定期テストを廃止したのは有名ですが、代わりに単元テスト(受け直し可能)を実施している。
非認知能力の価値がよく言われているが(AO入試など)、結局はペーパーテストで受験を戦わなければならない。これがなくなれば単元テストも辞めたい、とのこと。まだまだ実現したいけどできない理想はあるのだなと思った。


■蔭山英男先生とバッチバチ
「漢字を何回も書かせられても意味ない。昆虫図鑑で漢字は覚えられる」みたいなワードが出ると蔭山先生の顔がちらつくwww
確かに前提がどのようなレベルを想定しているかという話はありますね。
大体、麹町中学というのが都心の超ど真ん中、日本の中枢に位置しているというのがまあ極端ではある(校舎の6階に温水プールがあるとかね)。教員のレベルも注目度も高いでしょう。
全く教育が機能していない、授業が成立しない、生活保護が当たり前、生活保護を獲得するための逆教育を施す、みたいな世界もあるわけです。こちらはまた別の対応が必要ですよね。

まあ見ている所はおんなじなんだと思いますよ。当事者意識をもって、生きる力を身につけさせることだ。

 

子供はその環境での教育に晒されるしかない。であるならば、もうあとは教員の質を上げることと親(大人)を教育するしかないと思いますよ。スズカンさんの言葉の中で「子供を持つ家庭は23%しかいない、つまり77%は教育にお金を使わないでほしいと思っている」という煽りがありましたけど、本当にそうでしょうか。少子化なのはその通りですが、自分が子育てをしているかどうかって関係ないと思うのですが。教育は近い未来の国造りそのものなんですから。まさにそのところに当事者意識のない大人があまりにも多いっていうことでしょう。
ただし教育費の無償化は相当上手くやらないと良い結果にならないと思いますけど。


工藤校長は当たり障りのない、ふわっとした、感情に訴えるような(心を一つにとか、がんばるとか、みんな仲良くとか)、そういう言葉が大嫌いだということを繰り返し述べていて面白かった。まったくもって、これまでの教育現場でさんざん使われて、使われ過ぎて伝統化した、諸悪の根源ですわ。要するに思考停止しましたという証です。しかし大学の教育学部ってそういう言葉で濁していかないと通過できない場所なんですよ。教育実習も。これは本当に大きな問題だと思いますね。

 

教育畑のど真ん中にいる人が、これだけズバズバ本質を突いて、実践しているのってかなりレアなケースなんじゃないでしょうか。なんか最近、現役の教師が効率化とか生産性を上げるみたいな方向性が(主にTwitterとかで)盛り上がっていて、まあそれも一つは良いんですけど、社会全体の意識改革みたいなところにアプローチしていきたいですよね。丸付けのテクニックとかじゃなくてね。麹町中の改革のように公教育のど真ん中からと、既存の学校ではない全く新しい学校を作るという方向からも動きがあって、本当に良い動きが実現し始めているんではないかという予感がします。


そういうわけで、今回の教育フォーラムは過去最高に満足度が高かった。ありがとうございます。