ちろうのレイブル日記

本当によい教育を考えるためのブログです

ここ1ヶ月で読んだ本のレポ

●「ヒトはなぜ学ぶのか 教育を生物学的に考える」

教育を生物学的に考えるという本。これは今までにない新しい観点から教育を捉えた内容。根性論ではない、遺伝による影響がどれだけかということに終始した内容でもない。画期的な内容です。

学習の構造が三層になっていて、

個体学習∋模倣学習・共同学習∋教育による学習

というまとめ方は面白かった。

カロとハウザーは教育をこのように定義している。
「すでに知識や技能を持つ個体が、目の前にその知識や技能を持たない学習者がいるときの特別に行う利他的な行動によって、その学習者に学習が生じること」

積極的教示行動
1、ある個体Aが経験の少ない観察者Bがいるときにのみ、その行動を修正する。
2、Aはコストを払う、あるいは直接の利益を被らない。
3、Aの行動の結果、そうしなかったときと比べてBは知識や技能をより早く、あるいはより効率的に獲得する。あるいはそうしなければ全く学習が生じない。

簡単に言うと、子供のために親がいつもと行動変えるとか、それで親がコストを払うとか、しないということです。
このような観点で見てみると、実は自然界の動物のほとんどがこの3つを同時に満たす教育的行動をしていないのだという。例えば親が勝手にやっていることを子供が見て学習する場合、1を満たしていない。それは模倣学習であり、厳密な教育ではないということ。

しかし、いろいろ観察した結果、人間以外に教育をしている動物がいた!
・ミーアキャット
・タンデム・ランニングアリ
・シロクロヤブチメドリ
現在見つかっているのは、この3種だけ。しかもここ数年でようやく見つけた例ばかり。よく見つけたなってゆう。
これは今後、いろんな動物を観察することによって発見されていくかもしれないから楽しみ。


つまり、やぱり教育こそが人間ならではの行動なのかもしれないですね。



●「代ゼミが負け、東進が勝ち、武田塾が伸びる理由」

タイトルがうまい。タイトルにここまで強烈なメッセージを込める本あります?マウンティング半端ねえ・・でも実際そうなんだろうなという納得感がある。代ゼミが方向転換したこと、東進が広がり始めた時の話、フランチャイズの話、武田塾の話、etc。知らないことも結構あって勉強になった。

新しい業態が出てきたとき、最初は必ず「そんなビジネスがうまくいくわけねえ」と批判されるものだというのは、不変の真理なのですね。東進も然り、個別指導塾もまたそうだった。次はどんな教育の形が現れるのだろう。


●「日本の隠れた優秀校」

amazonをサーフィン(サジェスト?)してて、たまたま見つけて良さそうだったから購入。大分にある英語学習に力を入れている学校や、元祖陰山メソッドの学校、池袋にあるインターナショナルスクール、横浜の中華学校など、多様化が進んでいる教育現場を実際に取材に行ってレポートしている本。10年前の本なんだけど、これは勉強になった。逆に言えば10年も前からもうこれらの多様化は始まっていたんやね、っていう。むろん公立中高一貫にも触れている。

中華学校は制度的にも英語教育をやっている学校よりも冷遇されていて、教室も施設も足りていないんだって。今はどうなんだろう。これからはむしろ中国語を学べる学校こそ需要があるのでは?

これ以降の新しい動きといえばN高校とか、月額課金の動画サービス、教育Youtuberの出現、(ホリエモンとか)新しいタイプの学校を作る動きが出ているってところでしょうか。


●「震える牛

震える牛 (小学館文庫)

震える牛 (小学館文庫)

重厚な社会派小説が読みたくて、本屋で見つけてジャケ買い(帯文に書いてあった「平成版『砂の器』」という文句に惹かれた。正確には中古でポチった)。

これは大当たり。面白かった。ミステリとしてもスリルがあったし、まあちょっとネタバレすると食品偽装とか、地方の画一化(ショッピングセンター戦略、郊外化、ファスト風土化、大店法と商店街・個人商店潰れる問題などなど)の話が絡んでくる。現実をかなりトレースした内容。これはフィクションの世界の話ではない。現実をリアルに描いている。おっそろしい・・

ミステリを楽しんで、現実社会を知る。これこそが豊かな読書体験だと思うのです。マジで高校生たちは、くだらない受験勉強している暇があったらこういう小説を読め。


●「殺人犯はそこにいる」

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

これもずっと積ん読してあったんだけど、問題作ですね。なんかテレビで未解決事件を追う、みたいな番組を見て、そういえばと思い出して一気に読んだ。

これぞジャーナリズムというべき決定版。すごかった。
警察と検察のメンツを保つために、冤罪は放置され(本書では冤罪で17年刑務所に入れられた人が解放されたが)、はっきりとわかっている殺人犯が今もなお見過ごされている。

北関東幼女連続殺人事件にまつわる真相究明をしていく話です。この清水潔というテレビ局記者、尋常じゃないですね。汚職と強欲にまみれた警察官と違って、探偵のごとくに真実に近づいていく。いち記者がここまで出来るんや・・っていうちょっとした感動。

上記「震える牛」も警察の腐った体制を生々しく描いているわけですが、こっちはリアルガチ(by出川哲朗)のノンフィクションで、真実を覆い隠し、ミスを認めない警察の実態が・・ヤバすぎます。

過去作に「桶川ストーカー殺人事件」という本があって、ストーカー規制法の元になった事件なんですけど、これもこの記者が真相究明していて、犯人グループを警察に情報提供を何回もしたのに、警察は動かず、結局うやむやになった(主犯格の兄が主犯とされ、本人は変死)という過去があります。

もうね、この国の正義はどこにあるんだという話です。警察が一度決めたストーリーに乗らない真実は迷惑だというわけです。これ、警察の常套手段ですからね。真実とか、被害者とか、国民の平和よりも、自分たちのメンツを守ることが優先される。

本書「殺人犯はそこにいる」にも、この桶川ストーカー事件にことがおさらいされていて、改めて知ることができます。とにかく、日本人の多くがこの本を読むことで、良い方向に日本が変わるんじゃないかなと思います。