ちろうのレイブル日記

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中森明夫「アイドルになりたい!」を読んだ

アイドル評論家の中森明夫さんの新著「アイドルになりたい!」ちくまプリマー新書)を読んだ。表紙の絵はベボガ(虹のコンキスタドール黄組)のぺろりん先生。新書で表紙にイラストが入っているのは珍しい。まあ最近だと画像が載ってたり、変わったデザインのものもあるけどね。

2011年に出版された「グループアイドル進化論」(岡島紳士・岡田康宏共著)でアイドル戦国時代の幕開けが謳われて以降、アイドル評論というジャンルの本はいくつか出版されている。例えば「アイドルのいる暮らし」「AKB48白熱論争」「前田敦子はキリストを超えた」「僕たちとアイドルの時代」「ご当地アイドルの経済学」等々、、そしてローカルアイドル・メジャーアイドルも含めて、グループアイドルというものが十分に知れ渡った(むしろ飽和状態?)2017年に満を持して世に出たのが、初のアイドル入門本と銘打たれたのが本書「アイドルになりたい!」である。

小学生から中学、高校生くらいまでのアイドルを志す若い女の子に向けて、優しく語りかける口調が貫かれている。アイドルの定義から、その仕事について、歴史について、そしてアイドルの未来について。イイこともあれば悪いこともある。本当に大切なことが、しかし難しくならないように、包み隠さず、誠実に書かれている。もちろん硬い評論というものも意義のあるものだと思うが、多くの人に届くのはこういう本だろうなと思う。評論っていうと、どうしても評論することが目的となってしまいがちで閉じてしまうからね。この本は徹底的に開かれているというかんじ。ぺろりん先生が表紙を描いているのも、それに一役買っている。

そしてこの本がもっとも響くのは、「アイドルというものに憧れがある、でもアイドルになりたいなんて表明してもいいのだろうか」と自問してたり、あるいは無意識にその欲望を封印している子だと思う。この本は「アイドルになりたいと思っていいよ」と背中を押している。やっぱり今ってやりたいことが何でもチャレンジできる時代でしょう!僕もかつてお笑い芸人を目指してたし。そのことで人生はへんな方向に行ったかもしれないけど(泣)、それも人生だし、チャレンジしなかったら絶対後悔してたと思う。

もちろん現役でアイドル活動をしている人が読めば、目指すべき方向を見つける手助けになるだろう。僕は今の推しメン全員にこの本を読んで欲しいと思うくらいです(プレゼントNGだとそれが叶わない、悲しい)。また、アイドルヲタクが読んでも様々な発見があります。この本の冒頭で語られるのは「アイドルとは「好き」になってもらう仕事」だということ。アイドルを目指すにしても、ファンになるにしても、まずアイドルについて「知る」ことをしないと何も始まらないですからね。また、アイドルヲタクであれば推しメンがいるわけで、では推しメンのどこが好きなのだろう、なぜ好きなんだろうとか考えるもの面白い。



中森明夫さんというのは、「アイドル文化」というものに強烈な愛を持っている人だと感じる。それは約35年もアイドルについて語っているというのだからそれはもう筋金入りだ。ちなみに僕も過去に「アイドル〈ヲタ〉になる方法」というタイトルの同人誌を作ったりするくらい、アイドルのなり手への僕なりのアドバイスや、アイドルヲタのススメみたいなものを書いてきたつもりです。ただ特定のアイドル(AKBだったり指原莉乃ちゃんだったり仮面女子だったり)を題材にしてだったから、あまり普遍的ではなかったかなあとも思う。だからより一層、この「アイドルになりたい!」には感じるものがありました。

本書の終盤では、あらゆる文化やスポーツやエンタテインメントが「信じる力」で成立しているという話で、例えば野球やサッカーなんかがそうだと書かれている。それに比べて歴史の浅い「アイドル」はまだまだ十分に文化として認められていないという。たしかにそうだ!まずそういう視点に気づかせてくれるのが一つある。そしてここでも背中を押される。つまり「アイドル」だって、野球やサッカーや相撲や柔道やと言ったようなものと肩を並べたっていいじゃないか、という心強い後押し。これはアイドルが好きだったり、アイドルに関わっている人にとって、とても勇気をもらえる一冊だと思います。皆さんも是非読もう!